今後、10人に1人はかかるであろう相続税をはじめ、
税金にまつわるあれこれを、わかりやすくお伝えしていきます

 

2005年〜2007年

'0712 26 代償分割ってなに?(その1)
'0801 27 代償分割ってなに?(その2)
'0802 28 相続税の課税の仕組みが見直される?
'0803 29 相続した土地を売却する時の注意点!
'0804 30 遺産分割協議のやり直しはになることも!
'0805 31 遺産分割協議後は登記をしておくことをおすすめします
'0806 32 あなたの相続は本当に大丈夫?〜財産が少なくても相続対策は必要です〜
'0807 33 遺留分の特例
'0808 34 相続税は分割払いができる?〜相続税の延納について〜
'0809 35 相続税を相続財産で納める〜相続税の物納について〜
'08010 36 遺言のススメ(その1)

'08011 37 遺言のススメ(その2)
'0812 38 マイナスの財産ってどんなもの?
'0901 39 申告期限までに遺産分割協議がまとまらない場合


2007.12

26 代償分割ってなに?(その1)

○遺産分割の方法
 遺産分割の方法としては、@被相続人の財産1つ1つごとに取得者を決める「現物分割」(これが最も一般的な遺産分割の方法)、A遺産をすべて換金し、相続人に金銭で分配する「換価分割」、B特定の相続人が特定の財産を相続する代わりに、他の相続人に金銭などを支払う「代償分割」の3つがあります。今回はこのうち代償分割についてのお話です。

○代償分割はどのような場合に有効なのか?
 自宅・農地・事業用地などの不動産や自社株が主な相続財産である場合に有効と言えます。これらの財産を分割してしまうと、事業が継続できなくなるなどの不都合が生じてしまうためです。
 例えば、相続財産は自宅1件だけで預金はほとんどないような場合、複数の相続人が均等に財産を分けることは非常に困難です。自宅を相続人全員の共有とすれば均等に分割することも可能ですが、以前にもお話したとおり、共有はトラブルの先送りに過ぎません。そこで、このような場合の分割方法として代償分割が有効なのです。

○具体例で考えてみましょう
 相続財産は土地1ヶ所(相続税評価額1億円)のみ、相続人は長男と次男の2人のケースです。相続財産である土地の上には、長男名義の建物がすでに建っておりそこに居住しているため、土地を長男が単独で相続する場合、次男がもらえる財産はないことになります。しかし土地を2人の共有で相続しても、長男が住み続けるのであれば、次男には相続税の負担こそあれメリットはありません。さらに将来的に、いとこ同士の共有となることも考えられますので、トラブルの種を残すことになります。そこで長男は土地を相続し、その代償として長男が所有する金銭等を次男に支払うという代償分割を行います。前出の例で言えば、長男が1億円の土地を取得する代わりに、長男が次男に対し現金5千万円を支払うという分割協議書を作成します。すると税務上は、長男・次男がそれぞれ5千万円ずつ取得したとして取扱い、相続税も2分の1ずつ負担することになります。このように代償分割によれば、分割が難しい財産であっても、均分相続を実現することができるのです。
 ただし、遺産分割協議書の書き方によっては、代償財産が長男から次男に対する単なる贈与として、贈与税の課税対象とされる可能性もあります。したがって、このような場合には必ず専門家である税理士にご相談されることをおすすめします。


2008.01

27 代償分割ってなに?(その2)

 前回は代償分割とは何かということをご説明しました。今回は代償分割を行う場合の注意点についてお話ししたいと思います。

○相続税額への影響はあるの?
 代償分割をしても遺産総額が増える訳ではありません(前回の具体例では代償分割によってもよらなくても遺産総額は1億円で変わりません)。したがって、相続税額の総額は現物分割など他の分割方法と何ら変わることはありません。

○代償金をもらう側の資金繰りは?
 代償分割によって取得した代償金は、相続税の課税対象とされるため、相続税の負担が発生します。しかし代償金をもらう側(前回の具体例では次男)は、受け取った代償金の中から相続税を納めることができるため、資金繰り的に苦しくなることはありません。

○代償金を支払う側の資金繰りは?
 代償金を支払う側(前回の具体例では長男)には、非常に重い負担がのしかかります。そもそも売却して分割することができないために代償分割をする訳ですから、長男自身が負担すべき相続税のほか、次男に支払う代償金まで長男自身の財産で支払わなくてはなりません。

○相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
 以前にもお話しましたが、相続により取得した資産を相続開始から3年10ヶ月以内に譲渡した場合には、その資産を譲渡した者の納付した相続税額のうち一定の金額を、その譲渡した資産の取得費に加算して計算することができる特例があります。つまり支払った相続税の一部を経費化することができるのです。しかし、代償分割によった場合には、相続により取得した資産(不動産)のうち、代償金を控除した部分だけがこの特例の対象となりますので注意が必要です。

 これまでみてきたように代償分割制度を活用すれば、その相続財産を一番有効に活用できる人が相続し、かつ、相続人間で財産を平等に分けることも可能となります。しかし、最も大きな問題は代償金の確保です。したがって、相続財産の分割が困難と予想される場合には、相続税の納税資金の準備だけではなく、代償金も事前に準備しておく必要があるでしょう。納税資金及び代償金の準備方法として、以前にもお話した生命保険の活用も1つの方法です。
 なお、今回お話した代償分割については非常に分かりづらく、遺産分割協議書の書き方によっては思わぬ税金が課税されることもありますので、専門家である税理士にご相談されることをおすすめします。


2008.02

28 相続税の課税の仕組みが見直される?

 昨年12月に発表された平成20年度税制改正大綱で、新しい事業承継税制に関連して、「相続税の課税方式を遺産取得税方式に改めることを検討する」ことが打ち出されました。もしこれが改正されれば、昭和33年の改正以来続いてきた「法定相続分に基づく遺産取得税方式」が改正されることになります。この改正は相続税の計算方法を根底から変える改正であり、現在相続税対策をしている資産家の皆さんにとってはまさに大問題と言えるでしょう。今回はこの相続税の課税方式についてお話したいと思います。

○相続税の課税方式は大きく分けて2種類
 相続税の課税方式には大きく分けて、「遺産税方式」と「遺産取得税方式」と呼ばれるものがあります。
 遺産税方式とは、相続人の数や遺産分割の仕方に関係なく、被相続人の財産(遺産)の大きさに着目して相続税を計算する方法です。この方法によれば、被相続人の遺産総額が○○億円ならば相続税は××億円と決まります。たとえ相続人が1人であろうと10人であろうと、また、財産を1人で全てもらおうが10人で均等に分けようが全体の相続税額は変わりません。
 これに対し遺産取得税方式とは、相続人1人ひとりが取得した財産の大きさに着目して相続税を計算する方法です。この方法によれば、財産を1人で全てもらった場合が最も相続税が高くなり、相続人全員で均等に分割したときに最も相続税が少なくなります。

○現行の課税方式は?
 昭和33年以来続いている現行の課税方式は、「法定相続分に基づく遺産取得税方式」です。この課税方式は、遺産取得税方式を基礎とし、遺産取税方式の欠点である遺産分割の仕方によって相続税の総額が変動する点を修正するため、仮に法定相続分で分割したものとして一旦相続税の総額を計算し、各人の財産を取得した割合に応じて相続税を負担する方式です。これにより、どのように遺産を分割したとしても、遺産総額と法定相続人が同じであれば、相続税の総額は変わらないようになっています。
 相続の相談でよく「私は1億円の不動産を相続したんだけれども、私の相続税はいくら?」と聞かれることがありますが、現行の課税方式では、その方だけではなく全員の相続財産の総額と法定相続人が誰なのかが分からなければ、どんなに優秀な税理士さんであっても各人の相続税額は計算できません。しかし、今後「遺産取得税方式」に移行すれば、そのような相談にも即答出来るようになるでしょう。


2008.03

29 代償分割ってなに?(その1)

 ただ今、確定申告真っ最中の中で原稿を書いています。今年は何故か土地を売却した時の申告(譲渡所得)が多いようです。平成になってから買ったものを売却した場合は、大体赤字になっています。しかし、相続した土地を売却した時は、多額の税金が発生します。

譲渡所得の計算は、
収入(売却代金)ー{取得費(買った金額)
   +譲渡費用(売る為の経費)}×0.15
          =所得税 
が基本です。
 他に、ー1ー 5%の住民税がかかります。
    ー2ー 居住用の場合は3千万円を引いた後に所得税(0.15又は0.1)と住民税(0.05又は0.04)がかかります。

相続した土地では、幾つかの点で通常と異なります。

  1. 先ず、買った金額が分からないケースが多い。親からの場合でも不明なのに先祖代
    々の場合は全くお手上げです。相続税の申告書に記載されている金額だと思っている人もいますが、間違い。この時は、売った金額の5%が買った金額となります。
  2. 実際に親(祖父等)が買った金額が分かっている場合には、相続時にかかった、登記費用や不動産取得税をプラスすることが出来ます。平成17年の最高裁判決に寄るもので、最近の変更点です。前記(1)、概算取得費の場合は使えません。
  3. 相続開始(死亡日)から3年10ヶ月以内に相続した土地を売ったケースでは、その人に相続税がある場合、その相続税のうち土地に対応する分は取得費にプラスできます。  


    例えば、Aさんは、先祖代々の土地を1億円(相続税評価額)相続しました。相続税は3千万円でした。(相続財産はこの土地のみ)Aさんは翌年、このうち半分の土地を七千万円で売却しました。(Aさんの居住用の土地ではありません)※仲介手数料が216万円かかりました。この場合の税金は、
    譲渡収入  取得費 取得費加算 譲渡費用 
    7千万円ー{350万円+3千万円+216万円}

          ×0.15=515万1千円(所得税)
          ×0.05=171万7千円(住民税)
      * 7千万円×5%=350万円
      * 土地については、売却していない土
        地にかかる相続税もプラスできます。

    もし、3年11ヶ月目に売却した場合には、所得税965万1千円、住民税321万7千円となり、わずか1ヶ月の違いで600万円もの差になります。相続した土地の売却には、充分に注意してください


2008.04

30 遺産分割協議のやり直しは
   贈与になることも!

 遺産分割協議が整い相続税の申告をした後、遺産分割協議のやり直しにより取得した財産は、相続により取得したものではなく、贈与により取得したものとされてしまう場合があります。税務署側に贈与と判断された場合、相続税に加え贈与税も課税されてしまいますので注意が必要です。

○相続人全員の合意による遺産分割協議のやり直しは可能
 遺産分割協議が成立した後、事情が変わり、相続人全員が合意の上、遺産分割協議をやり直すことは可能です。最高裁判決(平成2年9月27日)は、「共同相続人は、既に成立している遺産分割協議につき、その全部又は一部を全員の合意により解除した上、改めて分割協議を成立させることができる。」としており、民法上は相続人全員の合意があれば、遺産分割協議のやり直し自体は全く問題はないのです。
 しかし、税務上は大きな問題があります。相続税の通達(相続税法基本通達19の2-8)では、「当初の分割により共同相続人又は包括受遺者に分属した財産を分割のやり直しとして再配分した場合には、その再配分により取得した財産は、……(遺産)分割により取得したものとはならない」となっています。つまり、遺産分割協議のやり直しは、税務上は遺産分割協議ではないため贈与税等が課税されることになります。つまり、遺産分割協議の合意解除は、民法上は有効であるが税法上は無効だということです。

○無効な遺産分割協議のやり直し
 しかし、もともとの遺産分割協議が法律上有効に成立していなかった場合には事情が異なります。例えば、遺産分割協議に参加していない相続人がいたり、あとから相続人が現れた場合などは、そもそも遺産分割協議自体が無効で成立していません。この場合には、遺産分割協議を必ずやり直さなければなりません。この場合の遺産分割協議のやり直しは、税法上も通常の遺産分割協議とみなされ、相続税の申告が終わっていれば、相続税の修正申告や更正の請求を行うことになります。

○遺産分割協議は十分な検討をしてから
 相続税の申告が終わった後に相談を受けることがあります。このときに感じるのは、財産の評価だけではなく遺産分割の仕方についても、もっと検討の余地があったのではないかということです。財産評価の間違えであれば更正の請求で対応できますが、この段階での遺産分割協議のやり直しは贈与等になってしまいます。後になって後悔しないためにも、相続の専門家である税理士に相談されることをお勧めします。


2008.05

31 遺産分割協議後は
    登記をしておくことをおすすめします

 皆さんが不動産を購入すると必ず登記をすると思います。不動産に関する所有権を第三者に対抗(主張)するためです。しかし、相続で取得した不動産については、なぜか所有権移転登記をしていないケースをよく見かけます。所有権移転登記をしないで放置しておくと、とんでもないトラブルに巻き込まれかねません。

○相続が発生すると所有権はどうなるの?
 被相続人が死亡し相続が開始すると、被相続人が所有していた不動産の所有権は、被相続人の死亡時に相続人に移転します。そして遺産分割協議が成立するまでは、全ての財産は、共同相続人全員の法定相続分に応じた持分による共有状態となります。
 例えば、父の相続人が母と子A・子Bの3人の場合、遺産分割協議が整うまでは、母が2分の1、A・Bそれぞれが各4分の1ずつの共有状態となります。

○こんな場合はどうなるの
 父の相続人は母と子A・子Bの3人。無事に遺産分割協議が整い、不動産を母の単独名義とすることに決まりました。しかし母はお金がかかることを理由に所有権移転登記をしないで放置していました。その後、Bが母とAに内緒で法定相続分で登記し(遺産分割協議書がなくても法定相続分であれば登記することは可能です)、Bの持分を第三者甲に譲渡してしまいました。甲が所有権移転登記を済ませている場合、母は甲に対し自己の権利を主張出来るのでしょうか?
 判例(最判昭和46年1月26日民集25巻1号90頁)では、遺産分割協議により法定相続分と異なる権利を取得した母は、登記をしなければ、第三者甲に対して権利を主張することは出来ないと考えられています。すなわち母は、遺産分割協議で取得したBの法定相続分4分の1に関しては、甲に対し権利を主張出来ないということになります。
 なお、遺産分割協議と異なる登記をすることは、税務署から贈与等とみられ、思わぬ税金が課税される恐れもあります。したがって、遺産分割協議によって不動産を取得した相続人は、出来るだけ早く所有権移転登記をしておいたほうが安全と言える
のです。


2008.06

32 あなたの相続は本当に大丈夫?
   〜財産が少なくても相続対策は必要です〜

 ○相続対策が必要なのは、ある程度の資産家だけだと思っていませんか?
 現在相続税を納めなければならないのは、100人に5人くらいと言われています。この方たちは相続税対策が必要です。しかし、相続対策はすべての家庭に必要です。現代の相続人の意識としては均分相続が常識となっているため、きちんと財産を分けるための対策をしておかなければ必ずもめます。
 例えば、財産は生まれ育った実家の土地建物と少しの預貯金という、どこにでもある一般的な家庭の場合、兄弟などで公平に分けるのは非常に困難です。この場合誰かが実家を相続し、残る相続人はその相続分に見合う現金をもらえれば公平なのかもしれませんが、これを行うにはそれ相応の現金が必要です。あなたの家庭ではそのような準備ができていますか?

○遺産相続を巡り親兄弟が憎しみあう?
 そんな事はドラマの中だけの話だと思っていませんか? うちの家族はみんな仲がいいから大丈夫だと思っていても、その配偶者がでしゃばってきたり、相続人に多額の借金がありお金が必要だったらどうでしょうか? 生まれ育った実家を売却して現金で分けるなんて事も、もはや他人事ではありません。

○分けやすい財産を作り、そして残す
 財産は実家の土地建物と少しの預貯金という一般的な家庭では、公平に分けるための財産作りが必要です。例えば生命保険を活用するという方法では、被保険者を被相続人、受取人を実家を相続しない相続人という形で生命保険に加入し、万一の時には、実家を相続しない相続人に現金を残してあげられるようにするのも一つの方法です。

○遺言書を残す
 家族の一部だけに口頭で意思を伝えておくだけでは、「親父はオレに全財産をくれると言っていた」「そんな話は聞いていない」など、喧嘩の火種を残すだけです。このような場合には遺言書を残しておきましょう。できれば公証役場で公正証書遺言にしておけば安心です。遺言書は何度でも作り直すことができ、日付が一番新しいもののみが有効です。したがって、今の時点でベストの内容の遺言書を作っておくのがよいでしょう。


 今まですごく仲のよかった親兄弟が、相続争いのためにいがみあってしまう…そんなことのないよう、残された人たちのことを考え遺言書を残してあげること、それこそが残された家族に対する最後にして最大の贈り物とも言えるのではないでしょうか。


2008.07

33 遺留分の特例

 平成20年5月9日(5月16日公布)に「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」が成立しました。この法律は、日本の経済が多くの中小企業を重要な基盤としている事、また地域経済の活力維持の観点から、親から子への経営の承継( 相続)をスムーズにさせようとするものです。中味は大きく分けて3つあります。

  1. 遺留分に関する民法の特例
  2. 支援措置/代表者の死亡等に伴い経営の承継に支障が生じている中小企業に特別な融資を行う。
  3. 相続税の課税の特例/対象となる中小企業の株式について相続税評価額の80%を納税猶予する。(農地の納税猶予と似ています)相続税法の改正は、平成21年度ですが、今年の10月1日(この法律の施行日)に遡及適用が予定されています。また、この特例は前にお話しました相続税の課税方式「遺産取得課税方式」との組み合わせで考えられています。

 それでは、今回のテーマであります、遺留分の特例についてお話します。遺留分はこのコーナーで以前にもお話しましたが、相続人に保障された最低限の権利です。通常は法定相続分の2分の1ですが、相続人が直系尊属のみの場合は3分の1です。兄弟姉妹には遺留分はありません。今回の特例は、一定の要件を満たす後継者が先代代表者(親)から自社株を生前贈与された場合に、先代代表者の推定相続人全員から書面により合意をとり、経済産業大臣の確認及び家庭裁判所の許可を受けることを前提に次の特例を受けることが出来ます。

  1.  先代経営者(親)から生前贈与された株式を遺留分を計算するさい除外する。
    *遺留分は相続開始の時の財産に一年以内の生
     前贈与財産を加え債務を控除したものですが、
     他の相続人の遺留分を侵害することを知って
     行った贈与は一年より前でも加えます。
  2.  遺留分の計算を贈与時の株式の評価額に固定する。
    *遺留分に加えられた贈与財産は、相続開始時 の評価とするのが原則です。後継者の努力によって株価が上がった場合、後継者は自らの
     努力分まで遺留分の対象とされることを防止する為の特例です。
    *1と2は両方でも片方でも合意出来ます。
  3.  1または2の合意がある場合には、次の合意を追加できます。 以下の財産を、遺留分を計算するさい除外する。

2008.08

34 相続税は分割払いができる?
        〜相続税の延納について〜

○相続税の納期限=申告期限(被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内)となっています。
 この納期限までに相続税を納めなかった場合は、年14・6%の割合の延滞税がかかります。(最初の2ヶ月までの期間は、平成20年の場合4・7%)

○相続税も他の税金と同様、金銭で一時に納付するのが原則です。
 しかし、相続により取得する財産は、現金や預金だけではなく、不動産のように現金化するのが簡単ではない財産もあります。
そのため、相続税については、特別に延納制度、物納制度が設けられています。今回は、延納制度についてお話したいと思います。
 相続税の延納制度とは、相続税額を何年かに分けて(月賦ではなく年賦で)納めるものです。この延納をする場合には、利子税がかかります。利子税の割合は、相続財産に占める不動産等の割合に応じて定められています。
 平成20年の場合、この不動産等の割合が50%以上ならば不動産等に係る延納税額は利子税の割合は年2・3%であり、最高の割合(不動産等の割合が50%未満で一般の延納税額)でも年3・9%となっており、延滞税よりはかなり低くなっています。

○延納をするためには、以下の要件のすべてを満たして、延納の許可を受けなければなりません

  1. 相続税額が10万円を超えること
  2. 金銭で納付することが困難な金額の範囲内であること
  3. 延納税額及び利子税の額に相当する担保を提供すること
     (ただし、延納税額が50万円未満で、かつ、延納期間が3年以下である場合には担保を提供する必要はありません。)
  4. 相続税の納期限までに、延納申請書及び担保提供関係書類を提出すること

○これらの要件の中で「金銭で納付することが困難な金額の範囲内であること」という要件は厳しく、添付書類である「金銭納付を困難とする理由書」により延納許可限度額が計算されます。
 延納許可限度額は、納付すべき相続税額 から、納期限までに納付することができる金額を引いた額です。
 そして、納期限までに納付することができる金額は、「相続した現金・預貯金等 (債務等控除後)と 納税者固有の現金・預貯金等の合計」から当面の生活費(3月分)及び当面の事業経費を引いた額です。
 つまり、相続した債務等控除後の財産及び納税者固有の財産の中で、現金預金と換金容易な財産全部から、当面の生活費・事業経費を引いた額全部を差し引いて延納許可限度額を計算するというものです。
 この理由書で定められている生活費の金額は、納税者本人分として月10万円、配偶者その他の親族の分として1人月4万5千円、その他所得税、地方税、社会保険料等となっています。

○延納の選択にあたっては、担保の有無、銀行借入による一時納付との比較なども考慮しなければなりません。

○延納によっても金銭で納付することができない場合に限って、一定の要件を満たせば、許可を得て物納をすることができます。

○延納を選択した者が、資力の変化等により、延納条件の変更を行ったとしても延納継続困難となり一定の要件を満たした場合には、申請により延納から物納に変更することができます。
(特定物納)


2008.9

35 相続税を相続財産で納める
        〜相続税の物納について〜

○前回は、相続税の延納についてお話しました。相続税に限っては、延納によっても金銭で納付することが困難な場合には、物納制度も設けられています。相続税納付は、 【1原則:期限内金銭納付→2特例:延納による金銭納付→3例外:物納】となります。
 相続税の物納制度とは、延納によっても金銭納付が困難な金額を限度として、相続税額を一定の相続財産(例えば、土地)による納付を行うことです。

○物納をするためには、以下の要件のすべてを満たして、申請し、物納の許可を受けなければなりません。
1、延納によっても金銭で納付することが困難な金額の範囲内であること
2、物納申請財産が定められた種類の財産で申請順位によっていること
3、申請書及び物納手続関係書類を期限までに提出すること
4、物納申請財産が物納適格財産であること

○「延納によっても金銭で納付することが困難な金額の範囲内であること」という要件は、添付書類である「金銭納付を困難とする理由書」により物納許可限度額を計算します。
 物納許可限度額は、相続税額から【1、「相続した現金・預貯金等及び相続人自身の現金・預貯金等」から一定の生活費等を控除した額】と、【2、「延納によって納付することができる金額」(年間の納付資力の延納年数分など)】の合計額を差し引いた金額となります。

○物納できる財産の種類は、第1順位が国債、不動産など、第2順位が社債、株式など、第3順位が動産と定められています。物納申請財産は、この順位に従って選択しなければなりません。

○相続により取得した財産で国内にあるもの、管理処分不適格財産でないこと等の要件があります。

○管理処分不適格財産とは、抵当権の目的となっている不動産、境界が明らかでない土地、譲渡制限株式等が定められています。

○物納申請書は、必ず相続税の申告期限(被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内)までに提出しなければなりません。期限に遅れて提出された場合には、物納申請は却下されます。

○物納は、物納財産の相続税評価額相当の相続税を納付したこととなります。


2008.10

36 遺言のススメ(その1)

遺言、というと「なんだか暗いイメージだな…」とか「財産をたくさん持っている人が考えることで私にはあまり関係ないな…」とお感じの方が多いのではないかと思います。
 遺言(実は「ゆいごん」と読むのは日常用語で、法律上は「いごん」と読みます)とは、死後のために物事を言い遺すことをいいます。

□増加傾向???
 裁判所の統計によりますと、遺言の検認の件数はここ10年間ほどでおよそ1.4倍になったそうです。「検認」とは自筆証書遺言の場合に必要な手続きです。
 自分で遺言書を作成することにより、財産の分け方について明示しておく、という考えの人が近年増加しているといえるのないでしょうか。

□昔々の話
 昔々、といっても戦後のはじめくらいまでですが、旧民法の時代においては「家」制度のもと、家長である戸主(男子の年長者が優先的に戸主となる!!!)が家督と全財産を相続するという「家督相続」が行われておりました。そのため、相続財産をめぐる争い事は起きなかったのです。ちなみに、戸主以外の相続については「遺産相続」が行われていました。

□遺言の必要性
 現在の民法は「家」制度を廃止しました。よって家督相続も廃止され、均分相続の考え方が導入されました。均分相続とは、「複数の相続人が平等に相続する」という考え方です。しかしながら、平等って何でしょうか。どうしたら平等に財産分けができるのでしょうか。もし財産のすべてが現金預金ならば、平等に財産分けをすることができるのかもしれません。しかし通常は簡単に分けられる財産ばかりではありませんね。民法での平等と実際の平等との隙間を埋めることができるものの一つとして、遺言が在るのではないでしょうか。

 時代が遷り変わるとともに、「家を守る」よりも「自分の権利を主張する」方向へ考え方が変わってきているように感じられます。そのため、相続争い(争続)を防ぐためにも、遺言を作成する人が増えてきているのかもしれません。


2008.11

37 遺言のススメ(その2)

□遺言には何を書くの?
 遺言にはどんなことを書いたらよいのでしょうか。実は、遺言できる事項は法律で決まっています。
・身分に関する事項(認知など)
・財産に関する事項(財産の処分など)
・相続に関する事項(遺産分割の方法など)
・その他(遺言執行者の指定など)

□メリット
 遺言を残すメリットは、一般的には次のことが考えられます。
・遺言者の考えどおりに財産を処分できる
・相続についてのトラブルを 回避できる可能性が大きい

□デメリット
 しかしながら遺言は完璧なものではありません。当然デメリットもあります。例えば、子供が2人いる遺言者が「すべての財産を長男に相続する」という遺言を残したとしても、そうはうまくいかないのです。一定の相続人については、「遺留分」といって相続人に残された遺言にも勝る最低限の相続分があります。財産をまったく残してもらえなかった次男が、その遺留分を請求してくるかもしれません。このように、遺言書をただ単に作成したとしても、思ったような効果が得られないこともあります。

□ 専門家に相談を!
 遺言者は、その遺言の内容が実行されるときはこの世にはいません。つまり、その遺言書の内容に何か疑問があったとしても、真意を遺言者に確認することは不可能です。そこで民法では遺言書について厳格にいろいろなことを定めていて、それに従わない場合はその遺言は無効となってしまいます。遺言の種類はいくつかあり、自分で書く自筆証書遺言は手軽ではありますが、せっかく書いた遺言が無効になっては元も子もありませんよね。

 では最後に、ぜひとも遺言を書いておいたほうがよいというケースを例示しておきます。
・自分の事業を特定の子供に承継させたい場合
・法定相続人以外の人に財産を残したい場合
・親不孝な子供に財産の相続をさせたくない場合
・財産よりも借金のほうが多く相続人に不利益を与える場合
・自分の死後、非嫡出子(婚姻外に生まれた子供)を認知したい場合 など


200.812

38 マイナスの財産ってどんなもの?

 相続税を計算するには、まずプラスの財産の価額(相続税評価額)を算出し、そこからマイナスの財産である債務及び葬式費用を差し引いた正味財産の価額を出します。そしてその正味財産に対して相続税がかかることになります。よって、そのマイナスの財産をきちんと把握することにより相続税が少なくなります。ではマイナスの財産にはどんなものがあるのでしょうか。
 財産の価額からマイナスの財産を差し引くことを「債務控除」といいます。そして、
債務控除することができるマイナスの財産は「債務」と「葬式費用」に分けられます。

○ 債務ってどんなもの?
 相続税の計算上、債務控除できる債務とは、被相続人が支払うべきであったもので確実なものに限られています。たとえば、次のようなものです。

・借入金
・死亡後に支払った医療費や被相続人の事業にかかる未払金
・死亡後に納付した所得税、住民税、固定資産税などの税金

   ただし、次のような債務は控除することができません。
※遺言執行費用
※相続開始により団体信用保険金と相殺された住宅ローン等
※相続人の責任によって徴収された延滞税など


○ 葬式費用って?
 葬式費用は本来、被相続人の債務ではありませんが、相続に伴って必然的に発生する費用であるため、相続税の計算上、次のような費用は債務控除することができます。

・通夜や本葬費用、お布施や戒名料
・葬儀の前後に出費したもので通常葬儀に付随して支出されたもの
・遺体の捜索や運搬の費用
   ただし、次のような費用は控除することができません。
※香典返礼費用
※墓碑及び墓地の買入費や墓地の借入料
※法会(四十九日など)に要する費用
※医学上又は裁判上の特別の処置に要した費用



○ 誰でも債務控除できるの?
 債務控除を受けることができる人は、その債務・葬式費用を負担することとなる相続人や包括受遺者(遺言で定められた割合で財産を取得する者)に限られます。相続放棄者は債務控除できませんが、遺贈財産がありかつ現に負担した葬式費用があるときは、その負担した分については控除しても差し支えないことになっています。
 また、相続人や包括受遺者であっても日本国内に住所がない人で一定の要件に該当する人については、債務控除することができる債務の範囲が限られています。


2009.01

39 申告期限までに遺産分割協議が まとまらない場合

 相続税がかかる場合には、相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に相続税の申告をしなければなりません。では、もしも相続税の申告期限までに遺産分割協議がまとまらない場合には、相続税の取り扱いはどのようになるのでしょうか。
 申告義務がある場合には、遺産が未分割でも、期限までに申告をしなければなりません。分割されていない財産については、各共同相続人が民法の規定による相続分に従って財産を取得したものとして、課税価格を計算して申告することになります。
 その後、遺産分割が確定した場合で、その分割に基づいて計算した課税価格や税額が当初の未分割での申告額と異なる場合には、更正の請求等をすることができます。
未分割で相続税の申告をする場合、適用できない特例があります。
 配偶者の税額軽減、小規模宅地の課税価格計算の特例は、未分割財産については適用できません。これらの特例は、申告期限から3年以内に遺産分割が確定した場合には、更正の請求をすることにより適用することができます。ただし、そのためには未分割での申告時に、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておく必要があります。さらに、調停・審判などのやむを得ない事情がある場合には、「遺産が未分割である場合についてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出し、税務署長の承認を得ることにより3年という期間制限を伸ばすことができます。
 そのほか、未分割財産は物納をすることができません。また、農地の納税猶予は、申告期限までに農地の分割がされていなければ適用を受けることができません。
 また、相続税ではなく、所得税についても影響があります。
 譲渡所得の計算をする場合に、相続した財産を譲渡したときには、相続税を取得費に加算することができる特例がありますが、この所得税の特例は、相続税の申告期限の翌日から3年以内の譲渡について適用があります。この特例も遺産分割ができない場合には、利用できなくなってしまうおそれがあります。
 未分割財産である不動産から生じる不動産所得は、各相続人に法定相続分に応じて帰属します。したがって、未分割である年分の不動産所得は、各相続人が法定相続分に応じて申告することになります。